面白い時代に生まれたなぁ、と思います。
AIが目の前に現れて、「あ、これは前提が変わる」と感じた瞬間から、ワクワクとイライラとが混じったような、なんともじっとしていられなくなる気持ち。
知識として知っているのと、自分の手で動かしてみるのは、まったく違う。
とりあえずやってみよう。そう決めて、目の前の仕事を実験台にしました。
これは、その5日間の記録です。AIとクリエイティブを協働してみたい人、クリエイティブの制作をもっと速く回したい人、同じような問題意識を持っているクリエイターの方に読んでもらえたら嬉しいです。
5日前、わたしはClaude Codeを開いたことがなかった
わたしは目の前の仕事として、自社のサービスLPを作る必要がありました。
クリエイティブディレクターとして20年仕事をしてきたわたしの感覚では、エンジニアやデザイナーと組んで、企画から制作、ローンチまで2〜3週間かかるのが普通でした。でも今回、AIを前提としたワークフローに、やり方を変えてみようと思いました。
ただ1枚LPを作るのではなく、チームの誰もが「自社らしい」表現を保ちながら品質高くウェブページを作れる状態にしたかった。つまり、組織がマーケティング活動を素早く回していける仕組みごと作りたかったんです。
…さて、どうすればいいか。困ったときは仲間に頼ろうということで、AIに詳しいエンジニアの雪野くんに聞きました。
「DESIGN.mdを作るといいよ」と教えてくれました。
DESIGN.mdとは、ブランドのルールブックをテキストで書いたファイルのことです。色、フォント、トーン、コンポーネントのルールなどをひとつのMarkdownファイルに言語化する。これをAIに渡すことで、「このブランドらしい表現」をAIが理解できるようになります。YAMLという書き方で構造化すると、AIがより正確に読み取れる。
これが、AIと一緒にクリエイティブを作るときの「憲法」になります。
そして何かをつくる時にこのデザイン憲法「DESIGN.md」と、一つひとつの要件を書いた「REQUIREMENT.md」をつくると、ゼロからスクラッチで作ろうとしなくても、誰もがイマココラボらしいトーンを保ったクリエイティブが作れちゃう!ということ。

そんなわけで、まずDESIGN.mdを書くことから始めました。

ターミナルを、初めて開いた
DESIGN.mdができたら、次はClaude CodeとPencilを使って実際に作り始める番です。
Claude Codeを使って、AIと一緒にコードを書いてウェブページを作る。ターミナル(あの黒い画面…私は一生触ることはないと思っていた)から操作します。Pencilは、そのコードをブラウザ上で確認しながら編集できる環境です。
数学の偏差値が20くらいだったこともある私にとって、今までは数学的な世界観のあるものは「自分と無縁なもの」と距離を置いていました。コーディングもその一つ。今まではエンジニアに「わからな〜い!教えて〜!」とこういう時だけ発動する女子力を発揮して頼っていた私。私の人生でもこういうタイミングが来るものかぁ…とか思っていたんですが、Claudeに「次に何をすればいいか」を聞くと、一つ一つ丁寧に教えてくれる。コマンドをそのままコピーして貼り付けて、エラーが出たらそのエラー文をそのままスクショをとってClaudeに投げる。それだけで前に進めました。

「あれ?簡単??」後のフローは、Claudeさんが手取り足取り、優しく導いてくれるじゃないですか。
最初にClaudeが生成したLPは、構造はあっているけど見た目は40点くらい。そこから「このセクションのビジュアルをもっと力強くしたい」「このフォントサイズは小さすぎる」と言葉で指示を重ねていくと、するする、と変わっていく。
これ、面白い。
気づくと夜中の2時でした。
60点を80点に上げようとすると、時間が溶ける
職人気質が顔を出しました。
もっとこうしたい、もっと…とAIに指示を重ねていると止まれなくなる。
「ここまでやりたい!」と思ってやっていると、2時間、3時間。あっという間にたって、Claudeから「みっきーさん。もう2時間経ちました。正直言って、もう今日はここまでにしましょう!」と何度も止められるんです。まるでカーナビみたい。

「いやいやいや。まだやるんだってば!」と、その度にClaudeにストイックな選択肢を投げまくって、睡眠時間を削ってしまった。だって、今まで全然経験したことない世界が、どんどん現れて面白いんだもの。そこに、しぶとい性格が相まって、ついついやりこんでしまう。
気づいたら私は美容室でパーマをかけてもらう時もClaudeと一緒にウェブページを作っていました。
ハッと気がついて美容院の鏡をみると、顔色が緑色っぽくなってて、2時間半後、美容師さんに「大丈夫ですか?いつもそういう感じなんですか?」と心配されるくらい疲弊していました(笑)。
例えるなら、映画『Trainspotting』のトイレに入っていっちゃうあの感覚です。(つたわる人、いるかな…)

社内レビューでは「このビジュアルの色が少し違う」「このコピーは変えたい」という修正が出ました。その場でClaudeに指示を出して、修正を重ねていきました。

バナーも作りました。
デザインの方向性と素材を渡して、ClaudeとPencilに指示を重ねていくと、10種類以上のバナーが2時間もかからずに出来上がっていきました。サイズ違い、訴求違い、トーン違い。「じゃあこのパターンも」と思いついたものをその場で試せる感覚は、これまでのやり方では体験したことがないものでした。
制作フローマニュアルも、全工程が終わったあとに作りました。

やりながら気づいたこと、つまずいたこと、うまくいったこと。それを振り返りながら、次に誰かが同じフローを踏むときに迷わないように整理しました。どのツールを使うか、どの順番で進めるか、どんなプロンプトが効いたか。DESIGN.mdの作り方から、Claude CodeとPencilの使い方、社内レビューの回し方まで、一連のフローをドキュメントにまとめてチームで共有できる状態にしました。
正直、やり込みすぎて、ちょっと自分をいじめてしまいました。これはやりすぎ注意です。
やってみてわかったこと
ワークフローが見えました。イメージしたものは作れるとわかりました。これが一番大きかったです。
やってみて気づいたことが色々とあります。
「見えているものを形にする」AIと、「見えていないものを創る」AIは、種類が違う。
60点を80点に引き上げるのは、人間の仕事でした。企画する力、何を形にするかを考える力、社内のコンセンサスをとる力。AIがどれだけ賢くても、「そもそも何を作るのか」という問いには答えてくれません。今回わたしがやったのは、すでに頭の中に絵があるものを形にする作業。それはAIがとても得意なことでした。
一方で、0から何かを発想する、まだ見えていないものを創造するフェーズは、また別の話。そこにはもっと違う使い方があるはずで、ここはまだ探求中です。
脳のメモリの解放と、メタ認知が大事
脳のメモリの解放も大事だと気づきました。気がつくとのめり込んでしまうので、無理した状態になったり、自分の癖にハマってしまったりもします。
そんな中、やってみてよかったTipsとしては、料理をしながら開発するスタイル。
ちょうどこの4月から新学期で娘がお弁当生活になったのもあり、作り置きをしようと、キッチンに立ちながら、左にPCと右にまな板とカレーの具材を並べて、Claudeがコードを生成している数分間、人参を切りながら待ってみました。

これが意外と脳をスッキリさせることに途中から気づき始めました。手を動かしていると頭が切り替わって、戻ったときに冷静な目で画面を見られる。没入しすぎる自分には、この「意図的な離脱」が必要でした。
AIを使っていると、自分の思考の癖がかなり出てくる。指示の出し方、こだわるポイント、止まれなくなる瞬間。鏡を見ているような感覚です。だからこそ、自分が今どういう状態にあるかを客観的に捉える「メタ認知」が、思った以上に大切だと感じました。離脱して人参を切るのは、没入を解くためでもあったけれど、自分を外から見るための時間でもあったのかもしれません。
「何を表現したいのか」自分の感覚を研いでおくことが、これまで以上に大切になる
もうひとつ気づいたのは、表現の均質化という問題です。AIを使うと、アウトプットがきれいにまとまる。でも、どこか同じ匂いがする。誰が作っても似たようなものになる。だからこそ、「何を表現したいのか」という自分の感覚を研いでおくことが、これまで以上に大切になると感じています。
ビジュアルのクオリティは、正直70点。感動する体験にはまだ届かない。AIが均質化していく表現の中で、感動を生むクリエイティブを作るには、わたしたちクリエイターが仕事を遊ぶように楽しむ想像力が、まだまだ必要だと感じています。そしてそれは、一人でできることではない。デザイナーやエンジニアと、もっと深く共創していきたいと思っています。AIをど真ん中に置きながら、人間同士がぶつかり合って、はじめて生まれるものがある。
そこを一緒に探求したいクリエイターやエンジニア、デザイナーがいたら、ぜひ声をかけてください。
一度経験すると、もう過去のフローに戻ろうとは思わない。それははっきり言えます。
地図が書き換わっている
2002年、わたしはキャリアをスタートしました。インターネットがようやく動き出した頃。情報はまだ重く、遅かった。先人たちが築いたビジネスモデルを教わって、手を動かして、体で仕事を覚えた。気づけば20年以上が経っていました。
その地図が、今書き換わっています。
人が意図していようとなかろうと、非連続で変容できる経験が、どんどんやってくる。今がその稀な時代だと感じています。

今この瞬間は、向こうからやってくる経験を、断らないようにしています。
生きていると、自分が望む望まないにかかわらず、いろんな経験が向こうからやってきます。専門外だから、今は無理だから、という理由で扉を閉めてしまうと、自分の可能性がどんどん狭まっていく気がする。だから一度、受け取ってみる。そこから始まるものがたくさんある。
20年かけて磨いてきたやり方や、職人的な気質の自分に愛着がありました。でも目の前にこのツールがある以上、それを前提に動きはじめた時、新入社員と同じスタートラインに立つってこと?っていう感覚がありました。えー、またそこからやるの?という気持ちもゼロではないけど、でも同時に、何にでもなれるという妙な軽さもある。
冒険する気持ちはずっとありました。それが今、いよいよ加速してきた感じがしています。
感動を生むクリエイションを一緒に。
ただ、AIについていくことが目的ではないと思っています。
仕事を奪われるとか、乗り遅れるとか、そういう話ではない。このAI時代に飛び込んで、自分が変わっていく、世界が変わっていく、そのドキドキ感を体験するという自由が、今ここにあると思っています。それを楽しむこと。そして、仲間と一緒に新しいものを創造する喜びを感じるために、AIと協働する。それが大事なんじゃないかなと、今は感じています。
感動を生むクリエイティブを作るには、人間としての想像力、創造力が必要だから。
その感覚を鈍らせないために、身体を使う時間を手放さないようにしています。音楽を演奏する、誰かと話して、飲んで食べる、子どものためにお弁当を作る。旅に出て、知らない場所に身を置く。美しいものに触れて、感動する。画面の外で感じたことが、画面の中に戻ってきたときの目を変えてくれる。
そういう時間の中で、ふとイメージが降りてくることがあります。降りてきやすい状態を、意識的に作っていくこと。その感覚を大切にして生きることが、「クリエイティブに生きること」や「働くこと」なんじゃないかなと、今は感じています。
一緒に旅する仲間の存在の大切さ
5日間でローンチできたのは、今イマココラボで新しいフローを一緒に作ろうとしてくれている仲間たちのおかげでした。そもそも、一人で仕事していては、やってみよう!とか楽しもうとか、ここまで思わなかったんだろうなぁと。みんなが面白がりながら、転がるように一緒に作ってくれた。そのエネルギーがなければ、きっとここまで来られなかったと思っています。

今繋がっている人たちと、ここまで積み上げてきたものを全部持ったまま、一緒に何かを作っていく。そこから思いもよらないものが生まれる瞬間が、わたしにとって一つの旅であり、すごく楽しいことだと思っています。何ができるかは、やってみるまでわからない。だからこそ、ますます選びあった仲間が大切だなと感じています。
この数年を走り切った先に、どんな面白いことを誰かに届けられるか。
その問いを携えて、旅は続いています。
これほどまでに、成長と変容の機会が世界中に現れている時代はないと思っています。
AI×クリエイティブに興味がある人がいたら、ぜひ会って話しましょう。
お気軽に連絡ください!