画像

ビジネスを冒険に変えるペンの使い方|グラレコ・グラファシ入門

執筆者画像
長縄 美紀
クリエイティブディレクター
  • 参加する
  • 読む
2025,12,15
#イベント

【3行要約】
・会議や対話をその場で一枚の絵にするグラレコ/グラファシ。実は奥深く流派があるその世界を、「記録係」「促進係」×「ビジネス/関係性」の地図で整理し、ご案内します。
・ペン一本で、会議の場を「ビジネスを一緒に冒険する時間」に変えていく、自分らしいスタイルの見つけ方を紹介します。
・わたしが実践してきたZ軸グラフィックファシリテーションと、講座&実案件でその冒険をご一緒するための入り口をご案内します。

こんにちは、長縄(みっきー)です。
イマココラボで、クリエイティブ事業の推進・組織づくりの伴走をしています。

ここ数年、私の仕事の中で存在感を増し続けているのが
グラフィックレコーディング/グラフィックファシリテーション(以下グラレコ) です。

経営会議、新規事業の構想、社内研修、採用イベント、1on1のふりかえり──
10年ほど前にこの技を学びはじめ、
仕事場にグラレコを持ち込むようになってから、仕事の幅が明らかに広がりました。

「今日の打ち合わせでこんなにイメージが形になると思わなかった」
「自分たちの本音や迷いが、そのまま、その場で絵になっていていくのがおもしろい」

そんな声をいただくことも多く、
そこから新しいテーマの相談や別部門のプロジェクトに繋がることも、一度や二度ではありません。

ペン一本で場に関わることで、
ビジネスの場が「情報共有」から、「一緒に冒険していく場」に変わっていく。
私にとってグラレコは、自分の創造性とビジネスを接続してくれる、大事な仕事の武器になっています。

Index

やりたい人には、心から勧めたい。だからこそ最初に地図を広げたい

ありがたいことに、最近はこんな声をもらうことが増えました。

「グラレコ、気になっています」
「自分でも描けるようになりたいです」

創造性を仕事に活かしたい人にとって、
グラレコやグラフィックファシリテーションは、本当におすすめできるスキルです。
自分の感性や創造性を生かしながら、ビジネスの現場で価値を出しやすいからです。

ただ、そのときにいつも頭に浮かぶ問いがあります。

その人がイメージしている「グラレコ」は、どんなイメージなんだろう?

ということ。

私の感覚では、グラレコ界隈にはいくつかの“流派”があります。
興味や関心の領域によって、学び方も、現場での使い方もかなり違うからです。

  • 会議をビシッとまとめるのが得意なスタイル
  • チームの感情や関係性をていねいに扱うスタイル
  • ワークショップ設計とセットで価値を出すスタイル

…などなど。

その違いを知らないまま「なんとなく」学んだり依頼したりすると、

  • 学ぶ側:自分がやりたいことと、学ぶ内容が微妙にズレる
  • 依頼する側:期待していた成果と、実際のアウトプットが噛み合わない

というすれ違いが起きやすくなります。

そこでこの記事では、

みっきーの視界から「グラレコ界隈の地図」をいったん広げてみる

ことを試みます。

  • 記録係と促進係の違い
  • ビジネス寄りと関係性寄りという2つの目的軸
  • その先にある「Z軸」と呼んでいる、まだ言葉になっていない領域

を整理しながら、

  • これから学ぶ人が、自分に合った出発点を見つけるために
  • これから依頼する人が、「どんな人に頼めばよさそうか」を言語化するために

少しでもヒントになればうれしいです。

最後に、イマココラボで私が実施する「Z軸グラフィックファシリテーション講座」 の予告と、
実案件のご依頼についてのご案内も添えています。

ここからは、Live Media編集部のりーちゃんとの対話をベースに、整理していきます。

 


描く人は「記録係」?それとも「促進係」?

りー 「グラレコ」は知人がやっていたので名前だけは前から知っていたんですが、最近は「グラファシ」という言葉もよく見かけるようになってきて。同じように見えるけど、何が違うんですか?

みっきー 「会議や対話の内容を、絵や文字・図で見える化する」という意味では同じなんだけれど、話し合いへの関わり方が違うんですよね。ちょっと図解で見てみましょう。

  • グラフィックレコーディング
     中立な第三者として議論には介入せず、
     「何が話されたのか」をビジュアルで記録することに力点を置く。
     → いわば 記録係
  • グラフィックファシリテーション
     ビジュアルをツールにしながら対話に関わり、
     グループが目的を達成するのを手助けする。
     → いわば 促進係

りー なるほど、議論に入るかどうかの違いなんですね。この横軸の「ビジネス」と「関係性」ってどういう意味ですか?

目的は「ビジネス寄り」?それとも「関係性寄り」?

みっきー 活動の目的が「ビジネス寄り」なのか「関係性寄り」なのか、という軸ですね。どちらに力点を置くかで、アプローチが全く変わってくるんですよ。

① ビジネス寄り:具体的な成果やアウトプットを出したい場

ビジネス寄りの場では、

  • 戦略や方針を決める
  • 新しい事業やサービスの方向性を整理する
  • 次の一手やアクションプランを合意する

といった、具体的な成果が求められます。

議論の中で生まれたコンセンサス(合意された現実)を、
1枚の図として可視化し、そのまま資料や次の会議に接続していくようなイメージです。

こんな場に向いています

  • 会議はしているのに「結局何を決めたのか」が残りにくいチーム
  • 新規事業やプロジェクトの議論を、整理して進めたい場
  • 経営層や他部署に、ストーリーで共有したいテーマがあるとき

② 関係性寄り:チームの土台や信頼関係を整えたい場

関係性寄りの場では、

  • 一人ひとりの思いをていねいに言葉にしていく
  • お互いの価値観や大事にしていることを知り合う
  • まだ言葉になっていないモヤモヤも含めて共有する

といった、人と人とのつながりを扱います。

表面的な意見だけでなく、その奥にある感情や背景も含めて描いていくことで、
「このメンバーでやっていきたい」という土台を整えるイメージです。

こんな場に向いています

  • これから長く一緒に働きたいメンバーが集まっているチーム
  • コミュニケーションは成り立っているが、本音が見えにくい組織
  • みんなの納得感を伴うビジョンやメッセージをつくりたい場

りー なるほど、似ているようでやっていることは結構違うんですね。次の一歩につながる実用的なアウトプットを出すのか、それともチームの関係性そのものを可視化するのか…。なんとなく、ビジネス寄りのほうが難しそうな雰囲気がありますね。

初心者はどこから学ぶとよいのか

りー じゃあ、これから学びたい人は、どこから手をつけるのがいいんでしょう?できれば、手っ取り早く身につけられる最短ルートが知りたいです。

みっきー う〜ん、こればかりは、自分がなんのために学びたいのか?を見つめた上で選ぶのがいいと思うんですけど、ほとんどの人にとって最適な出発点は、「ビジネス寄り」の流派かなぁと思います。

実用的なスキルから身につけるのが堅実な一歩ですね。役割としても、いきなり議論を導く「ファシリテーター」を目指すのではなく、まずは議論を正確に記録する「レコーダー」から始めることで、基礎が固まります。その土台があって初めて、より複雑なチームの力学を扱えるようになるのかなと思います。

まずは、

  • しっかり聞く
  • 要点をつかむ
  • 伝わる形で図解する

という「レコーダーとしての基礎」を身につける。
この段階だけでも、会議の質や、仕事の理解度はかなり変わります。

そのうえで、

  • 「場づくりにも関わってみたい」と感じたら、促進係側へ
  • 「関係性の深い対話を支えたい」と感じたら、関係性寄りへ

というように、自分の関心の方向へ少しずつ歩を進めていく。
グラレコは、そんなふうに自分のスタイルを探りながら進めるスキルだと感じています。

2軸のその先にある「Z軸」

りー むむ…奥が深いですね…!最短ルートなんてないってことがよくわかりました(笑)。ところで、みっきーはこの地図でいうと、どのあたりにいるんですか?

みっきー 私自身が主に活動しているのは、

ビジネス寄り × 促進係(グラフィックファシリテーション)

の領域。事業構想や、中長期のビジョンを考えるようなテーマをご一緒することが多いですね。

みっきー それでありながら、今お話ししたタテヨコ2軸の地図と別の次元も同時に感じながら活動している気がします…。

りー 別の次元…?この表にない軸があるってことなんですか?

Z軸:まだ言葉になっていない「本当の願い」や「可能性」

みっきー はい。いうなればタテ軸(Y)とヨコ軸(X)に対して「Z軸」というか…。まだ言葉になっていない人・チームの「本当の願い」や「現れたがっている可能性」を捉えて可視化しています。

  • このチームが、心のどこかで本当に向かいたいと思っている方向
  • まだ誰も言葉にしていないけれど、場の奥に流れている願い
  • いまは構想段階にある「これからの可能性」

のようなものです。

グラフィックファシリテーションをしているとき、私はいつも、

「この人たちは、本当は何を大事にしたいんだろう」
「この場からあらわれたがっているものはなんだろう」

という問いを、感覚をひらいて感じ続けています。

確かにそこにある、でもまだ目に見えないものが、目にみえる絵になった時、「あぁ、これだ!」という空気に変わる。そして、もっとこうしていきたい!とエネルギーが躍動しだすんですよね。

その瞬間こそが、
ビジネスが「冒険」に切り替わるタイミングなのかもしれないと、個人的には思っています。

学び実践し「自分のスタイル」に出会っていくプロセス

りー Z軸…よくわからないですけど、マニアックで面白そうですね笑

みっきー そうですね。一人ひとり個性が違うので、グラフィックファシリテーションを学んで実践しての一番面白いところは、「その人らしさ」があらわれてくるところなんじゃないかなと思いますよ。3ヶ月くらい学んで実践すると、だんだん現れてきます。

  • 事実を整理するのが得意な人
  • 感情やニュアンスを描くのが得意な人
  • 混沌の中から構造を見つけて、シンプルな図に落とし込むのが得意な人

同じ技術を学んでも、「どこに目が向きやすいか」「何を描きとどめたいと思うか」は、人によって違います。

グラファシの面白さは、そうした違いがそのまま「自分の創造性」や「仕事観」として立ち上がってくるところにある、と感じています。

私自身も、学び始めた10年前は、こういう展開につながっていくとは、全然思いませんでした。

いろんな人に学びにも行きましたし、目の前の仕事の全ての場でグラファシしよう!と場違いなことをして上司から怒られたこともあります笑。

海外のビジュアルプラクティショナー(ビジュアル実践家)のコミュニティに所属して海外のカンファレンスに参加してみたり、本当に一人ひとりのスタイルは違う、じゃあ自分はどうなんだろう??どんな時によろこびがあるんだろう?と、新しい自分に出会っていく探求プロセスは、とても豊かな冒険でしたよ!


グラフィックファシリテーションを学び、新しい自分に出会おう

みっきー イマココラボのワークショップスペースで、2026年の春から「Z軸グラフィックファシリテーション」の講座をスタートします。

この講座は、私が持つ正解の型を教えるというよりは、エッセンスを共有することで、受講した人一人ひとりの個性や、その人らしいスタイルが表現されることを意図しています。

りー その人らしいスタイルが表現されるって、すごくいいですね!どんな内容になるんですか?

みっきー 今、色々と練っているところなんですが、まずは基礎講座として、「入門編」「スタンダード編」「アドバンス編」の3本をリリースする予定です。

学んだあとが面白い講座にしたくて、実際のクライアントワークに挑戦する機会も提供していく予定です。一緒にお仕事する仲間にも出会えると楽しいですね。学びながら、その人の自分らしさが見つかったり、思いもよらない展開につながるような場にしていきたいです。

りー わぁ…!なかなかの道のり(笑)でも、めちゃくちゃ濃厚で楽しそうですね。新しい仲間にも出会えそうだし、ワクワクしますね。

みっきー 学びながら、新しい自分に出会っていきたい方と、ぜひ出逢いたいです。私もそれを通じて、新しい自分と出会います!

講座は2025年1月上旬に順次募集告知をしていく予定です。ご興味のある方は、下記フォームから「興味がある」旨のご連絡をください。詳細が決まり次第、優先的にご案内いたします。

また、「こんなことを学んでみたい!」などご希望もあれば、ご意見をいただけたら、講座を一緒に作っていくのも面白いかもしれないですね。

詳細はLive Media等でお知らせしていきますので、関心を持っていただけた方は、ぜひ続報をチェックしてみてください。

そして、すでに具体的なプロジェクトや場があり、

「うちの合宿や会議でも、こういうグラファシを入れてみたい」
「事業づくりや組織づくりの対話を、一緒に可視化してほしい」

と感じてくださった方がいれば、
グラレコ/グラフィックファシリテーションのご依頼も、いつでも歓迎しています。

講座でご一緒するのも、
現場で一緒に「ビジネスの冒険」を進めていくのも、どちらも大きなよろこびです。
ご相談、お待ちしています。


相談&感想お待ちしています

講座への興味、質問、感想、アイデア。“ふつうのお便り”も大歓迎です。
次の一歩をいっしょに考える入り口として、どうぞ気軽に声をかけてください。

講座の最新情報や、プロジェクトのご相談も、こちらからお送りいただけます。
どんな声でも、うれしく受け取ります。